2021-08-01から1ヶ月間の記事一覧

脱臼したような:川端康成『雪国』

押すに押されぬ著名作なので安心してふっかけることができるのだが、この作品のよく知られた冒頭は、どうもおかしくはないだろうか。 「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。」 改案。「長いトンネルを抜けると夜の底が白くなっ…

たしかに二つも入ってゐる:エミリ・ブロンテ『嵐が丘』ほか

声のいゝ製糸場の工女たちが わたくしをあざけるやうに歌って行けば そのなかにはわたくしの亡くなった妹の声が たしかに二つも入ってゐる*1 『嵐が丘』という小説がある(以下同書の物語展開を明かしているので未読の方は注意してほしい)。 運命的な二人の…

時にはまことの話を:酒のこと

私のいるところでは急速に、人間に新たな病が広まっている。人知は一面まったく翻弄されながら、ある局面では私の理解の及ばぬその力能を発揮してもいるようで、ずいぶん早急にvaccineが開発され、感染や重症化を抑えるために皆が接種を進めている*1。 その…